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北極圏  北極圏の地勢  交通網

◆北極圏  (draft)

  北 極圏とは北極点を中心とした高緯度地域のことで,夏に白夜になる北緯66度33分以北の地域を指すことが多い。北極海のほか,北米大陸北部,ユーラシア大 陸北部,グリーンランドおよびアイスランドやフェロー諸島などの島が,概ね北極域と呼ばれる地域といえる.植物生態学では北極域を,北半球の高緯度地方に あって寒冷な気候のため樹木が全く生育せず,植生はツンドラによって代表される地域を指すものとしている.また気象分野における定義では,北極点を中心に して,7月の月平均気温が10℃以下になる地域をさしている.この範囲は,概ね樹木生育の北限線とも重なっており,この線はスウェーデンの地理学者ノルデ ンショールド(O.Nordenskjold)の名をとってノルデンショールド線と も呼ばれる(NSRを開拓したA.E..Nordenskiold とは別人).このほか研究分野や注目するテーマによって,北極海とツンドラ気候区を合わせた地域,永久凍土地域,オーロラおよび磁気嵐の地域,および季節 氷が存在するベーリング海やオホーツク海を含めた地域などが,北極圏としてとらえられている.
arctic circle
図: 北極圏の定義
Definitions of the Arctic. (2005). In UNEP/GRID-Arendal Maps and Graphics Library. Retrieved 07:15, January 5, 2011 from http://maps.grida.no/go/graphic/definitions_of_the_arctic.

  この北極圏は全世界の陸地のおよそ1/6の面積,30百万km2,24のタイムゾーンが存在する広大な領域であるとともに,アメリカ合衆国,ロシア,カナ ダ,デンマーク(グリーンランドおよびフェロー諸島),フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンの8カ国が領土をもち,30以上の民族,約 4百万人が居住する.また多くの未開発の天然資源を擁している.
  しかし,北極圏の非常に厳しい低温環境,広大な湿地帯と多数の河川,凍土などのため,人間活動は大きく制限されてきた.広大な空間にほんのわずかの集落が 散在するだけで,交通網は未発達,生存するだけのために大きな努力を払わなければならない環境であることから,この地域に関する情報・知見はまだ未知・未 解明の部分が多い.このような北極圏が,近年注目されるようになった背景には,
  • 旧ソ連とアメリカ合衆国の間の政治的・軍事的対立が緩和し,北極圏での研究活動に対する政治的制約が低下したこと.
  • 未知の領域が多かった北極圏において,各種の科学的情報が急速に明らかになってきたこと.
  • 北半球の中緯度地帯の気象・気候には北極海の海氷状況が大きく関連すること.
  • 地球規模での気候の変化・温暖化の影響が,極地域の海氷状況に対して顕著に表出するようになってきたこと.
  • 夏期における北極海の海氷勢力減退が顕著に表れ,商業航路および資源開発面での可能性が高まってきたこと.
などがある.北極圏に関する研究 は,地球温暖化に関する取り組みと監視,未知のフロンティア領域への進出および天然資源開発,地球環境の保全,地域社会の保護と振興,およびこれらを実現 するための国際的な枠組みと協力関係の構築という,多様な課題・目的のもとに進めることが求められている.


ノルデンショールド線:小島 覚(北方生態環境研究学房),北極域の植生と植物の生態,北極海季報第6号,pp21.,2010.
IPY(International Polar Year)2007-2008:
 IPYは,極域に関する国際研究協力を推進するプロジェクトであ り,第1回は1882-1883年,第2回は1932-1933年,第3回はThe International Geophysical Year(国際地球観測年)に組み込まれて実施された.最新の活動はIPY 2007-2008として,60カ国以上が参加して各国の学術団体でつくる国際科学会議と世界気象機関(WMO)が中心になり,北極と南極における研究活 動が国際的連携のもとで展開された.
北極域の天然資源:
 2008年,USGSの科学者グループは,北極圏における未発見の石油・天然ガス資源量に関する調査・研究レポートを公表.北極圏に埋蔵していると予想 される石油,天然ガス,天然ガス液(NGL)の可採埋蔵量は合わせて,世界の未発見の可採埋蔵量の22%にのぼると報告した.このレポートは大きな反響を よび,北極海の天然資源開発への注目を加速した.