(1) カラゲイト海峡(Kara Gate Strait) ノバヤゼムリヤ島とバイガチ島との間の海峡.幅約43km,長さ約33km,最浅部の水深は21m. カラ海西部では,ノバヤゼムリヤ側では島に沿って南西に,ヤマル半島側では半島沿岸に沿って北東に向かう海流が卓越し,これに北西風の影響も加わり,冬に はカラゲイト海峡に向かって海氷が北西方向から漂流してくる.この海氷の一部は海峡を通って西のペチョラ海に流出する. バレンツ海とカラ海との間の交通の大部分はこの海峡を通して行われ,通航分離航路がある. (2) ユーゴルスキーシャール海峡(Yugorskiy Shar Strait) カラ海とペチョラ海は,ノバヤゼムリヤ島南端からバイガチ島(Vaygachi Island)を間に挟んで大陸のユーゴルスキー半島によって東西に分けられている.このうち,バイガチ島と大陸との間の海峡がユーゴルスキーシャール海峡である.海峡部の長さは約21海里(38km),海峡の幅は最大10km,最狭3km.最浅部の水深は13~15m.冬期は北西風と海流によって北西から海氷が流下してくるとともに,沿岸には定着氷が形成される.これに加えて海峡が非常に狭いため,冬期の航行条件はカラゲイト海峡よりも難しいものとなる. セベルナヤゼムリヤ諸島のボルシェビク島(Bolshevik Island)と,タイミル半島チェリュスキン岬(Chelyuskin Cape)との間の海峡で,Diksonの東北東780km,Tiksiの北西950kmにあって,カラ海とラプテフ海を分ける.長さ170km,幅は約50km,水深は32m~210m.東側の出口にはマールイ・タイミール(Maly Taymyr)島およびスタロカドムスコゴ島(Starokadomskogo)がある.8月でも定着氷が存在する場合があるなど,氷の状態によっては航行の難所となる.1913年にロシアのボリス・ビルキツキーによる探検航海で発見された. 2010年9月9日,Nordic Barents号(40,000DWT)が鉄鉱石を満載してこの海峡を西から東に通航した. (4) ショカルスキー海峡(Shokalskiy Strait) セベルナヤゼムリヤ諸島を構成するボルシェビク島と10月革命島(October Revolution Is.)の間の海峡.ビルキツキー海峡の約100km北に位置し,カラ海とラプテフ海を分ける.長さ137km,幅15km,水深は,水深とも船舶の航行には問題ないが,氷況はビルキツキー海峡よりも一般に厳しい. (5) ドミトリーラプテフ海峡(Domitry Laptev Strait) ノボシビルスク諸島(の中のリャホフ諸島)のボリショイ・リャホフ島と大陸との間の海峡.Tiksiの北東約430kmにあって,ラプテフ海と東シベリア海を分ける.長さ113km,最峡部の幅43km.水深は浅く,特に海峡東部には10m以下の浅水部が存在するため,船舶の航行は喫水6.7m以下のものに限られる. (6) ノボシビルスク諸島を構成する島の間の海峡.ラプテフ海と東シベリア海を分ける.コテリヌイ島とマールイ・リャホフ島の間が最も狭く約45km,長さは約190km.水深は一般に浅いが,中央部の16から18海里(29km~33km)程度の幅の部分は13m以上の水深がある.定着氷が通年存在する場合もある. (7) ロング海峡(Long Strait) ウランゲリ島と大陸の間の海峡.北極海岸の港Pevekの東約300kmにあり,東シベリア海とチュコト海を分ける.幅は138kmあり,南北2つの航路が設定されている.それぞれの航路における最浅水部深さは,それぞれ20m及び33mである.冬季には大陸からランゲル島へ定着氷が発達するが,夏季までこれが残ることは無い.しかしながら,アイスマッシフあるいは多年氷により航行が阻害される場合がある. (8) ベーリング海峡 1月から4月の間は海氷に覆われる.北向きの流れが卓越する. (1)~(7):北極海航路-東アジアとヨーロッパを結ぶ最短の海の道-,財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団,平成11年度;https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00862/mokuji.htm |