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北極評議会 The Arctic Council

Arctic Environmental Protection Strategy - 1991

 1989年,フィン ランド政府の発案により,北極圏に面する8つの国の代表がロバニエミに集まり,北極域の環境を保護するための方策に関して議論する会議を開催した.その結 果,北極域の環境問題に関して責任を有する環北極域の政府閣僚による,協力体制と方策に関する会議の開催に向けて協力することが決定された.この決定は, その後イエローナイフ(カナダ,(1990),キルナ(スウェーデン,1991)およびロバニエミ(フィンランド,1991)での準備会合に引き継がれ た. この発案のもと,たくさんの技術的,科学的報告が準備され,北極域環境保護ストラテジー(Arctic Environmental Protection Strategy)が取りまとめられた.このストラテジーは,8つの関係国による協力の頂点として生み出されたものである.

Arctic Council:北極評議会

北極評議会は正式には1996年 のオタワ宣言により,政府間の高度な評議会として発足した.その主な目的は,北極域を擁する政府間,および北極域に居住する先住民族および住民を含んで, 北極域における課題,特に持続可能な開発と環境の保護問題に関し,協力と調整,相互交流をはかるものである.評議会の正式メンバー国は,アメリカ合衆国, ロシア,カナダ,デンマーク(グリーンランドおよびフェロー諸島を含む),フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンの8カ国であり,オブ ザーバーは,英,仏,独,ポーランド,スペイン,オランダの7カ国である.これに加えて,恒久メンバー(Permanent Participants)資格があり,これは北極域に居住する先住民族の組織に対して与えられており,現在アリュート国際協会(AIA),北極アサバスカン評議会(AAC),グウィッチン国際評議会(GCI),イヌイット環北極評議会(ICC),サーミ評議会,ロシア北極先住民(RAIPON)が加盟している.

 正式メンバーのほかにオブザーバー資格が設けられている.オブザーバーは,北極域以外の国,政府間の組織あるいは議会間の組織(国際あるいは地域間など),非政府組織(NGO)を対象としている.現在,オブザーバーにはイギリス,フランス,ドイツ,ポーランド,スペイン,オランダの7カ国が認められている.

 評議会の議長国(Chairmanship)は2年ごとに交替する.初代はカナダで(1996-1998),次いでアメリカ(1998-2000),フィンランド(2000-2002),アイスランド(2002-2004),ロシア(2004-2006),ノルウェー(2006-2009),デンマーク(2009-2011),スウェーデン(2011-2013)の順に務めることになっている.また事務局はスウェーデンのトロムソに置かれている.

  北極評議会の閣僚会議は1年おきに議長国にて開催される.開催国は,閣僚会議の結果をもとに,次の閣僚会議までの間,閣僚会議の準備・政府高官の会議の調整を担当する.政府高官の会合は半年ごとに議長国にて開催される.

 評議会の下には6つのワーキンググループが組織されており,科学・技術の専門家グループが定期的に会合を開催し,政府高官級会議にその成果が報告されている.

    * Arctic Contaminants Action Program (ACAP)
    * Arctic Monitoring and Assessment Programme (AMAP)
    * Conservation of Arctic Flora and Fauna (CAFF)
    * Emergency Prevention, Preparedness and Response (EPPR)
    * Protection of the Arctic Marine Environment (PAME)
    * Sustainable Development Working Group (SDWG)

 ワーキンググループの所掌は閣僚会議の結果による公式文書で ある宣言に基づいて定められており,これに基づいてプログラムおよびプロジェクトを遂行することがワーキンググループの責務となっている.各ワーキンググ ループは事務局,委員長,運営委員会を持っている.運営委員会は通常,加盟国の政府機関および恒久メンバーからの代表が務めている.オブザーバー国・団体 からも同様にワーキンググループ会合およびそのプロジェクトに参加することができる.
 評議会および下部組織のすべての決議は,8つの評議会メンバー国の合意によるものである.

オブザーバー参加の動き

2009 年4月にトロムソで開催された閣僚会議では,中国,韓国,イタリアがオブザーバー加盟を申請していたものの,結論は2年後に先送りされた.以前,我が国外 務省はこの北極評議会へのオブザーバー参加について否定的な態度をとってきた.しかし近年の大陸棚延長に関わる協議,海洋底資源開発競争の活発化,国際的 な稀少鉱物資源市場の変化,および北極海への注目の高まりなどを背景に,4月の閣僚会議には外務省職員を派遣し,今後オブザーバー参加申請を行うことを表 明した.

カナダなどは,正規加盟国よりもオブザーバー国の方が多くなることに難色を示していると言われており,今回の3カ国の参加見送り決定もあり,2年後の閣僚会議の行方は流動的である.換言すると,これほど各国から注目されている事案となっているとも言える.