北海道のオホーツク沿岸に位置する紋別港の第3防波堤先端部外海側に建設された海中展望塔.1996年完成. 紋別港第3防波堤は親水機能を積極的に導入した構造を有しており,防波堤の上部を外海側に向かって階段式となった展望通路とし,その内部(下部)にも円 柱で支持された回廊状の通路が設けられている.この親水防波堤の沖側先端部は,地上3階建構造のデッキとなっており,その約40m外海側に突き出したとこ ろに海中展望塔であるオホーツクタワーが設置され,渡橋にて接続されている.タワーは海上38.5m,海中7.5m(海底面下を含むと13.45m),延 べ面積2,344m2の規模を誇る.オホーツクタワーは,親水防波堤である第3防波堤と連携して,紋別港の親水空間を形成する最大のトピックとして計画された. 計画当時,すでに国内には勝浦や白浜などいくつかの海中展望塔が供用されていたが,いずれも暖海系の海中生態を見せるものであったのに対し,オホーツク タワーは,冬期には流氷の下の海中生態を見せる世界初の施設を目指すものであった.また,流氷が押し寄せる海岸への建設であることから,海氷による構造物 への種々の作用を考慮した氷海構造物として建設された.海中部の展望窓からは,クリオネリマキナ,キチジやチカなど種々の魚,アザラシ,コオリガモ(海底 まで潜水する様子)などを見ることができる. 海中部(BF)および波浪が作用する海上部は円筒形の断面をもつRC構造で,その上部に鉄骨造で方形のホール(1F,2F)および円形の展望フロア (3F)が載る構造となっている.基礎地盤は,岩盤の上に砂層が堆積した構成となっており,海底地盤から約7m下の地中を基礎底面として下部円筒部分が設 置された重力式構造である.建設は,陸上製作した下部のRC部分,上部の鉄骨・RC造部分および渡橋部分の順に,大型起重機船で現地に設置,接合する方法 で行われた. 第3防波堤は直立壁のため,壁面からの反射波によって,タワー近傍では入射波の2倍近くまで海面が上がることが予想される.また第3防波堤壁面の近傍で は,波浪が衝突して大きな飛沫とともに渡橋には大きな揚圧力が働く恐れがある.こうした波浪の作用に対して安全性の検討と対策が講じられている.さらに は,冬期の流氷からの外力に対する構造物全体の安定性,流氷が移動することによってタワー外壁が摩耗するのを防止するために,海面周辺の外壁にはチタンク ラッド鋼が装着されている.建設から15年経過したあとも,このチタン鋼に摩耗は見られなかったことが報告されている. ---------- 参考文献 ----------- http://www.o-tower.co.jp/towerframe.html CTC96-I-101,西山満弘,田中輝未,向山松秀,木村統久:紋別港氷海展望塔の設計に関する研究-作用外力について-,第12回寒地技術シンポジウム,pp.610-617,1996.
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